ソニーのヘッドホンWH-1000XMシリーズがaptX/aptX HDに対応しない理由

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今回のトピックは多くのAndroidスマホが対応する高音質コーデック"aptX/aptX HD"について。

先日レビュー記事を公開した"WH-1000XM4"は対応していないのですが、なぜ? どうして? と気になり少々ググってみたところ「aptX/aptX HDはそこまで優れたコーデックではない」ということを知ったので、簡単にかみ砕きつつご紹介です。

WH-1000XM4のデメリットとして、僕はaptX/aptX HDに対応してないところを挙げていたのですが、もしかしたら、これは音質を追求するために外されたのでは? と。

改めてaptX/aptX HDについておさらいしつつ「どうしてWH-1000XM4はaptX/aptX HDに非対応なのか?」を深堀してみようかなと思うので、音質コーデックについて興味がある人はご一読あれ。

※2025/6/12 追記, 最新の情報にあわせて加筆・修正しました。

目次

ソニーのヘッドホン「WH-1000XM6/5/4/」aptX/aptX HDに対応しない理由

ソニー 1000xm4シリーズ

まずは"aptX/aptX HD"ってなに? について簡単におさらいしておきましょう。

aptX/aptX HDは、SoC"Snapdragon"シリーズでおなじみクアルコム社の音質コーデックで、SBCやLDAC、AACに並ぶBluetoothの圧縮方式(A2DP)の一つ。

aptX/aptX HDエンコーダのソースコードが"Android Open Source Project"に寄贈された恩恵により、Android 8以降ではライセンス料が不要になったため、現行のAndroid端末では基本利用できるのですが、ヘッドフォン/イヤフォン側が対応するにはライセンス料が必要になるんですよね。

(そのため、低価格帯のBluetoothイヤフォンやヘッドフォンは対応しないことが多い)

これもWH-1000XM4がaptX/aptX HDを見送った理由の1つなのは間違いないかと思うのですが、一般的に言われているaptX/aptX HDの仕様についてささっとまとめると以下のとおり。

aptX/aptX HDの特徴
  • 高音質
  • 低レイテンシー(遅延)
  • データのエラー回復により、電波状態の悪い環境でも安定して接続できる(つまり、途切れにくい)
  • SBCよりも優れた圧縮率を誇り、より多くの情報量を転送できる
  • ハイレゾ音源を伝送する場合は44.1KHzまたは48KHz/16bitにダウンコンバートしてからデータを圧縮

aptX HDはaptXをより拡張したコーデックとなっていまして。最大48KHz/24bitに対応し、48KHz/16bitのaptXに比べて256倍の細かな音を表現できます。

こうやって見てみるとaptX/aptX HDってメリットしかないじゃないですか? でも、さらに優れた能力を秘めた新参コーデックがありまして。それがSONYの自社製コーデック"LDAC(エルダック)"となるわけです。

LDAC(エルダック)の特徴
  • データ転送量は"SBC(328kbps)"の3倍、990kbps
  • 音質有線モードが"990kbps"、接続有線モードが"330kbps"で動作
  • ハイレゾ音源のために作られたコーデック
  • 96KHz/24bitのハイレゾデータをダウンコンバートせずに伝送できる
  • SBCと同等の伝送レート"330Kbps"でも音がクリア

Android OSはAndroid 8以降、"LDAC"に対応し多くのAndroidスマホで利用できるようになったのですが、aptXとLDACを比較した場合、概ねLDACのほうが遅延が少なく、そして高音質

LDACは遅延は少ないというデータは多くのメディアでも検証されていますし、それは当然SONYさんも認識済み。LDACはユーザーがビットレートを変更できるというメリットもあるので、すっぱりaptX/aptXを切り捨て、LDACに舵を切ったというわけですね。

ともすれば、aptX/aptX HDはライセンス料が絡んでくるのでコストもかかりますし、Apple製品は"AAC"、Android端末は"LDAC"を選択すれば遅延も少なく高音質で音楽を楽しめるので、現状、aptX/aptX HDに対応させる明確なメリットがないわけです。

音質コーデックの遅延については以下の記事が論文やデータを示し、非常に分かりやすく正確な情報を伝えてくれているので、気になる人は以下の記事にも目を通しておきましょう。(ほんとめっちゃ詳しく書かれてて感動しました。僕ももっと勉強しなきゃなやつ)

aptXは本当に高音質で低遅延なのか

WH-1000XM6/5/4がaptX/aptX HDに対応しないのはコンセプトに倣ったから

aptXやLDACについてのおさらいもあったので少々長くなりましたが、要約すると...おそらく、WH-1000XM4以降(WH-1000XM5やWH-1000XM6を含む)がaptX/aptX HDに対応していないのは"コンセプトに従ったから"というのが理由なのかなと。

2025年の新型モデル「WH-1000XM6」も同様で、対応コーデックはSBC、AAC、LDAC、LC3となっており、aptXやaptX HDには対応していません。より優れた音楽体験を追求したので、Apple製品は"AAC"で、Androidは"LDAC"で、Windowsは"SBC"で接続してくださいねってことですね。

ただ一つ、勘違いしてはいけないのは音質コーデックを意識するよりも端末を意識したほうがいいということ。

SoundGuysが公開しているコーデックの遅延を比較したグラフによれば、スマホの機種によりaptXとLDACの遅延にほぼ差が無かったり、LDACよりもaptXの遅延が少なかったり。音質や遅延を意識するなら、コーデックによる違いよりも元々遅延の少ないGoogle Pixelシリーズのようなスマホを選ぶのが正解です。

とまぁこんな感じで。長々と語るのもな...と思って可能な限り短くまとめたんですけど、深い。音質コーデックで調べれば調べるほどに深くて。僕は音質コーデックについて知った気でいたのですが、まだまだ勉強不足だと痛感しました。

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